以前は生前贈与というと、多額の贈与税が課税されるため敬遠されがちでした。現在では、相続時精算課税制度という制度が創設され生前贈与もやりやすくなりました。
では、制度の概要をみてみましょう。
通常、贈与税では110万円を超えた贈与金額は累進課税により課税がおこなわれます。しかし贈与税さえ払えばそれ以上の課税はありません。
相続時精算課税制度を選択すると、2500万円までは贈与税は課税されません。(それを超える金額に対して一律20%の平均課税となります。)ただし、ここで支払われる贈与税は、「相続税の仮払い」的な性格のもので、相続が実際におこったとき、生前贈与された財産も相続財産と合算されて相続税額の計算がされます。そこで計算された納付すべき相続税からすでに支払った贈与税を差し引いて精算が行われるのです。(一度適用をうけると、ずっと相続時精算課税の適用が強制されます)
いちばん気をつけたいのは、相続時精算課税の適用をうけた財産は相続時に小規模宅地の評価減の適用を受けることができないことです。たとえば生計を一にしている親族の居住用宅地は、小規模宅地の評価減の対象として、原則として80%の評価減の適用できる場合がありますが、これを相続時精算課税を適用して生前贈与してしまうと評価減の対象外となり、本来はらわなくてもいい相続税を払う必要が出てくるケースもあります。
では、相続時精算課税はあまりメリットがないか?というとそうでもなく以下のような場合には活用を検討してみてもいいかもしれません。
①収益物件の贈与
アパートマンション・テナントなど収益物件については、相続時精算課税を選択すれば不動産収益を所有者になる相続人に移転できます。これにより、相続人への相続税支払資金の確保や所得分散による所得税の節税などの効果が期待できます。
②同族会社の株式贈与
同族会社株式を生前贈与しておけば、相続人が経営に参画することができ、スムーズな事業承継が可能となります。相続人がオーナーとなることで、同族会社の従業員・取引先にとっても世代交代を認識させことができます。配当所得の分散による所得税の節税効果も期待できます。
③住宅取得資金の贈与
住宅ローンを組むよりも、被相続人から住宅取得資金の贈与をうけることでローンの負担を軽減することができます。(特例措置あり)